地元産給食で子供たちを育てたい

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 吉澤小百合さんは、村の学校給食に村内で採れた農産物を使うために、「学校給食を育てる会」を立ち上げ、牽引したきた一人。吉澤さんらの活動が、地場産品を高い割合で使用した宮田村の保育園、小・中学校の給食を支えています。
 この学校給食を育てる会の事務局の他、加工研究グループ「食ごころ」の代表も務める吉澤さんに、宮田村の学校給食や、ご自身の活動について語っていただきました。





せっかく村で採れた農産物があるのだから子供たちには地場産のものを食べさせたい



 村内の給食に地場産品を使おうと活動を始めてから10年程たちます。かつては米も野菜も、村外産を仕入れて使っていたのですが、平成15年から米と味噌については上伊那産のものをJA経由で納入し使用するようになりました。「せっかく村で採れた農産物があるのだから子供たちには地場産のものを食べさせたい」という思いがありました。
 翌年、地産地消の機運の高まりを受け、長野県の農政部からの呼びかけもあり、地域の農業委員の方等と協力して宮田学校給食を育てる会を立ち上げました。


野菜や果樹も地元産のものを



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 いきなりすべての食材を地元産に変えることはできないので、まずは米と味噌について使用し始めたことは前述の通りです。その後、他の野菜や果樹についても徐々に地元産のものを取り入れるように変えていきました。学校給食を育てる会会員(現在11軒)の作るものだけでは対応できないので、地域の直売所(エーコープ)にも対応してもらい、給食の地場産品使用率を徐々に高めていきました。地元産が無理ならばせめて宮田村が属している上伊那郡で採れたものを、というように、できるだけ近隣地域で採れたものを使うようにしています。

 やり方としてはこうです。月に一度、学校に対して「来月はこんな野菜が採れますよ」という連絡所を書くんです。そしてそれを見た学校から野菜の注文を受けつけ、その注文を農家さんに振り分けます。育てる会会員は、小中学校への配達は自分たちで行い、それ以外の村内農家さんの野菜や、保育園への配達は事務局が行います。その他、直売所経由の農家さんの野菜は担当職員が配達します。


農家と調理員をつなぐ役割を担う



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 もちろん、ここまですべてが順調にきたわけではありません。市場から仕入れた野菜ではなく地元農産物を使った給食を作るには、課題も多くありました。例えば、大量の給食を決められた時間内に作らなければならない調理員の立場から見ると、あまりに小さかったり、形が不揃いな野菜は使いにくくて大変です。それらを使おうとすれば効率が落ちてしまいますし、面倒ですよね。けれども農家の立場からすれば、大量の野菜が必要とされるならば形の揃っていない野菜だってある程度混ざってしまう、という声も出ます。

 そんな中、双方へ苦情がある場合には私たち事務局を通してもらうようにしています。そうすることで、互いに我慢しすぎることなく意見が言えて、円滑に回る仕組みが構築されたきたかなと思います。一方で、それぞれが抱える悩みや不満を相手へ伝えるだけでなく、農家も調理員も、互いの立場を理解してそれぞれがレベルアップすることが大切、ということも普段から呼びかけています。


地元のものを使おうという意識が根付いてきた



 昔に比べ、この10年で栄養士や調理員の間で「地元のものを使おう」という意識が根づいてきたと感じます。その変化によって、調理員の間で地場産品を使うための『積極的な工夫』がなされるようになったと思います。「地元のものを使うには手間がかかるから大変」ではなく「それでもどうにかして使えるようにしよう」というように意識が変わり、「地域食材を使った給食を子供たちに食べさせたい」という共通の気持ちが持ち合えるようになってきました。
 それらを応援する意味でも、年に一度は育てる会のメンバーや学校の栄養士・調理員、農家を集めて全体会を開いています。そこでそれぞれの立場から意見を出し合い、農家と学校がつながりを深めています。


コンパクトな地形と自校給食の宮田村だからこそ



 これらの仕組みがうまくいっている要因として、宮田村がコンパクトな村であることと、自校給食であることが挙げられます。小さい村だからこそ柔軟な対応ができている部分は多いと思いますね。
 さらに、調理員のうち半数は村の正規職員であること、これは地場産給食を作るうえで、一番の強みだと思いますね。長く働く職員が現場にいることによって、そのやり方や想いを次世代へと引き継ぐことができるんです。栄養士の方は県の職員のため、どうしても数年に一度移動がありますが、調理員が長く働いていることで、それまでの仕組みや工夫を、継続することができるんです。


子供を育てるのに地元産学校給食は大きな力となる


 子供たちにはやっぱり地元で採れた旬のものを食べて、強い体と心を作ってほしいと思います。昔ならそれは各家庭で当たり前にできていたことですが、時代が変わりそれは当たり前のことではなくなりました。その役目は今、学校給食に求められていると感じます。地場産給食には、子供を育てる大きな力があります。
 家庭や学校に子供を育てる役割を押し付けあうのではなく、地域全体で子供を育てるという意識を育てていきたいと思います。そのためには、今活動している私たちがいなくなったら終わり、というのではなく、次の世代にこれらの活動をつなげていくことが大切と思っています。

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